Dear HERO[実話]
真剣な眼差しに言葉がでないまま見つめていると、龍斗はもう一度顔を近づけた。
そして優しく守るように、ゆっくりとキスをする。
今度は少し長く…
言葉も笑い声もなく、そこに聞こえるのは3月の冷たい風の音と車内に流れる音楽…
「Reach Out」が二人を包み込んでくれた。
何かが……
何か感情が私の中で湧き上がってくる。
心臓が壊れそうなほど早く鼓動している。
胸が痛い……
目頭が熱い……
そんな私の異変に気付かず、龍斗は子どものようにニッコリ笑った。
「またね…」
そう言って立ち去ろうとする龍斗に、言葉がでないまま一度だけ頷いた。