Dear HERO[実話]
「ちょっと上がっていきなよ」
笑顔でそう言われ、何の疑いもなく軽い気持ちで部屋へ上がった。
男の部屋へ上がることがどういうことになるのか、そのときの私にはわからなかった。
知らないというのは時に大きな過ちを犯す。
男という生き物を甘く見ていたんだ。
このときの私はそれまで男の人と付き合ったことも、手を繋いだこともない。
男の人への接し方が分からず、どちらかといえば避けてきた。
そんな私にその男は一生残る傷を残していった。
「………!?」
……なに?
押し倒され、何が起こったのか一瞬わからなかった。
ただその男の力が…
目があまりにも怖くて恐怖が一気に押し寄せてくる。
そして只ならぬ状況を察したのか心臓がバクバクと鳴り始めた。
その鼓動は叙々に早くなる。
無意識のうちに手で自分の身を守ろうとしていた。