Dear HERO[実話]
予想通り6時を過ぎても上がれる様子はない。
龍斗は混雑しているお客さんの間を通り、一人カウンター席に座って待っていた。
何度か目が合う度に“ごめん”と申し訳なさそうに謝った。
時計ばかりが気になる。
早く…早く……
7時になり、やっとで店長が気付いてくれた。
よかった…。
でも結局一時間も待たせてしまった…
急いで着替えを済ませると、走って龍斗の元へ行き「ごめん、ごめん」と何度も謝る。
そんな私に機嫌を損ねることもなく、龍斗は「お疲れさま」と笑顔を見せた。
龍斗の車に乗りいつもより賑わう街並みを走りながら、頭はバッグの中に隠れているネックレスのことでいっぱいだった。
いつ渡そう…。
そして車はいつものレストランへ向かった。
高級なレストランでも、イルミネーションが綺麗なわけでもない。
特別なことは何もない。
ただ龍斗と一緒に居れること。
それが特別で…今でも忘れられないクリスマス。