やさしい手のひら・中編【完結】
「今日、アルバムのジャケ撮りなんだ」

「どこで?」

場所を聞くと、私がこの間仕事をした所と同じ場所だった

「なんのモデルの仕事したの?」

「うーん、最初は夏服の写真を撮って、次の日は・・」

ウエディングドレスを着たんだ・・・

「次の日は?」

「あっ、うん、ウエディングドレスの撮影・・」

「着たの?」

「うん・・・。着ないと困るって言われて」

「そっか・・」

急に健太が悲しそうな顔をした

「いやだった?」

「いやと言うか、俺との結婚式の時に着てほしかったかな」

「私もそう思って断ったんだけど・・・」

「仕事だから仕方がねぇよな。俺の我がままだな」

「ごめんね」

ほんとに申し訳なかった

「亜美が悪い訳じゃないんだから」

そう言って、私の頭を撫でてくれたけど、やっぱり初めてのウエディングドレスは健太との結婚式の時に着て欲しかったんだと思う

なんか悲しいまま短大に着いてしまい、

「ちゃんと勉強して来いよ」

「うん」

車から降りようとした時、私は

「健太との結婚式の時は、健太が似合うよって言ってくれたウエディングドレス着るから。それが私にとって初めてのトウエディング゙レスだから」

私は言い訳とかじゃなく、本当にそう思ったから健太に言った

「俺が亜美に似合う、亜美のためのウエディングドレスを作ってもらうから」

健太が言った言葉が嬉しくて、涙が零れそう

「うん」

「ほら、行って来い」

「行って来ます」

健太はクラクションを鳴らし、行ってしまった


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