やさしい手のひら・中編【完結】
再会
ネオンが華やかな、繁華街へと連れて来られ、私は周りをキョロキョロしていた

「亜美、キョロキョロしすぎ」

優香は私を見てお腹を抱えて笑っている

「だって、すごくない?」

「初めての人には強烈かもね」

呼び込みの人やらホスト?ホステス?そんな人がいっぱい歩いていて、その中にはスーツ姿の人もたくさんいて、驚くことばかりだった

「今、行くとこね、芸能人がよく来るとこなの。でも私はまだ会ったことないけどね」

優香はキョロキョロすることなく、真っ直ぐ前を向いて歩いていた

「ここだよ」

立派なビルだった

「ここの一番上なの、亜美行くよ」

手を引っ張られ私は優香に付いて行った

クラブというだけあって、音が物凄くて顔を近づけないと相手の話が聞こえないほどだった。ちょっと怖そうな人もいるし、外人もいるし。でもとにかく若い人でいっぱいだった

開いているテーブルに行き、とりあえず飲み物ということで2人ともビールを頼んだ。この間のこともあり今日はほどほどにしようと決めていた

さっき芸能人もここへ来ると優香が言っていた。でもそんな感じの人は私の周りにはいなく、噂だけなんだなぁ、と思っていた

何もしなくてもなんか心地よく、優香としゃべりながら楽しんだ

12時を過ぎた頃、クラブの中が騒がしくなった

「何?誰か来た?」

「なんだろうね?」

気にはしていたけど、人混みの中からは何があったのかまったくわからなかった

「私トイレに行って来るね」

私は優香に言い、その場を離れトイレを探していた

なんとなくこっちだろうと思い、行ってみるとやはりトイレがあり私は入って行った

「どうしよう!健太だよ」

えっ?

鏡の前で化粧をしている女の子達が健太と言った

私はトイレの個室に入り、人の話を盗み聞きするのはよくないと思いつつ、話を聞いていた

「健太と学でしょ。超かっこいいよね。初めて生で見たけど最高にかっこよかったぁ」

健太と学くんがここにいるの?どうして?なんで?

私の手に汗が滲む。やだ、どうしよう

会いたくないと思ってしまった

ここで会ってしまったら、私が東京にいることもばれてしまうし、会ってしまったら私の心が歪む

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