やさしい手のひら・中編【完結】
撮影が終わり、時計を見ると11時を回っていた

今までで一番長く仕事をして、さすがの私もクタクタだった

ロビーでお茶を飲み休んでいると新くんが来た

「お疲れ」

「お疲れ様でした」

「疲れた?」

「うん」

「待ってんの?」

「そういう訳じゃないけど」

「遅いから送って行くわ」

「大丈夫。健太に電話して、一緒に帰るから」

「もう帰ったんじゃないの?」

「帰ってないよ」

携帯を出し電話をしてみた

仕事中なのか携帯は繋がらず、私は携帯を閉じ

「出ないからまだここにいると思う。だから先に帰って」

「じゃあ、来るまで一緒に待っててやるよ」

「疲れてるんだから帰っていいから」

「俺に近寄るなって言われた?」

あまりにもはっきり言われ、しかもその通りでハッとしてしまった

「俺ってそんなに危険?」

「危険だよ。健太いるのわかってて、抱き付いてくるし」

「お前からかってると楽しいんだよな」

「ひどい」

「そうやって、すぐムキになるとこが…」

新くんは私から目を自動販売機に移した

「何よ。いつもそうやって私をバカにして」

その時、私の携帯が鳴り、すぐ電話に出た
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