やさしい手のひら・中編【完結】
着替えが終わり、廊下に出たけど、やっぱり新くんと帰ることをためらい、どう断ればよいのか考えながら歩いていた

ロビーの手前で新くんがソファに座っているのが見えた

なんて断ろうか悩んでいると、新くんは私がいることに気付き

「お前、遅いよ」

「新くん、私やっぱり」

「行くぞ」

私の言葉を聞かずに先に歩いてしまった

私は新くんを追い掛け

「ちょっと、新くん」

「腹減ったから飯食いに行こう」

私の手首を掴んだまま歩き、引っ張っていく

「ねぇ」

「何」

「私タクシーで帰るから」

急に新くんが立ち止まり、そのせいで私は新くんの背中におでこをぶつけてしまった

新くんは後ろに振り返り、私の目を見るだけで何も言わない

そしてまた歩き出し、まだ新くんが手首を離してくれず、私は小走りになりながら引っ張られていた

駐車場に行き、車のドアを開けられ

「早く乗って」

背中を押され、私は新くんの車に乗せられてしまった
< 116 / 388 >

この作品をシェア

pagetop