やさしい手のひら・中編【完結】
このまま別れようって言われるかもしれない

「やだ…よぉ」

私は座り込み、空を見上げながら、大声で泣いていた

子供が迷子になって泣いているかのように…

「亜美」

健太が走って来て、私の前にしゃがみ、大きな腕ですっぽり私を包んでくれた

「俺の嫉妬だよな」

私はたくさん首を横に振った。健太は悪くない。私が悪い

「亜美のこと信じてるのに、目の前で現実を見てしまったら頭にきて…」

「ご…めんな…さい」

「亜美は悪くないんだ。強引に誘われたって頭の中ではわかってるんだ」

「私が悪いの…私が…」

健太は私の肩を掴み、頬を流れる涙を拭ってくれる

「冷たい態度とってごめんな」

さっきの健太とはまったく違う、優しい声で私を見つめて言ってくれた

月明かりが健太の目に映っていて、それがとてもきれいだった

「俺こっち帰って来て、一度もマンションに帰ってないから、今日は俺んちに行こう。やだって言っても無理やり連れて行くけどな」

私の好きなあのフッとして笑う顔で、私の脇を抱え立たせてくれた

「亜美は子供みたいだな」

と言って、私のスカートをほろってくれた

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