やさしい手のひら・中編【完結】
「ここです」

そう言われて、私はドアを開けた

「亜美!」

私の顔を見るなり健太は立ち上がり、私を抱き締めた

先程までの興奮がまだおさまらないのか、ギュッと強く私を抱き締めた

「健太、痛いよぉ」

「あ、ごめん。だめだ俺。まだ興奮してる」

「お疲れさま」

こんな会話をしていたら、周りがあっけに取られていて

「外でやれよな」

祐介くんにまた冷やかされ

「うるせー」

と、健太は照れ笑いをした

由里と祐介くん、学くんと咲ちゃん。龍くんと優香だけポツンと取り残されていた

でも優香は覚悟を決めたかのように龍くんに歩み寄り

「お、お疲れ様でした」

冷たい視線で

「誰?」

「わ、私ですか?由里の退院祝いの時にいたんですけど」

「ふーん」

必死な優香と無愛想な龍くんを見ていると可笑しかった

「これから打ち上げなんだけど、亜美も行く?」

「うん?」

「ホテルでちょっとしたパーティーするらしいんだけど」

「私はいい」

そんな場所に私が行くなんてとんでもないことで…

「いいじゃん。行こう」

「今日はみんなと帰るし」

健太は残念そうにしていたけど、一般庶民の私達が行ける場所ではない。ここに今いるだけでも凄いことなのに
< 131 / 388 >

この作品をシェア

pagetop