やさしい手のひら・中編【完結】
夕方になり部屋で食事を取って、函館山に登るためロープウェイの入り口の前まで来た

さすが観光地だけあって、乗るのを待っている人がたくさんいた

順番を待っている間、小さい男の子が私達の前で転んで泣いてしまった

それを見た健太が

「男なんだから泣くな」

そう言って立たせて、ジーンズをほろってあげた

「女の子を守っていくんだから、男は泣いちゃだめだぞ」

男の子の頭をクシャクシャと撫ぜ、健太は微笑んだ

男の子は飛びっきりの笑顔で

「うん、ありがと」

そう言ってお母さんの所まで走って行ってしまった

「かわいいな」

健太は目尻を下げ、男の子の後ろ姿を見ていた

「男の子より亜美に似たかわいい女の子が欲しいな」

私は急に恥ずかしくなり、健太の腕をギュッと掴んだ

「結婚してからすぐに子供はいらないかな。いちゃいちゃしたいし」

「・・・うん」

自分がお母さんになるなんて、今の自分にはまったく考えていなかったことで、やっぱり恥ずかしくて下を向いてしまった

「亜美がお母さんなんて子供が2人になるよな」

「もぉーひどい」

「嘘。亜美はお母さんになってもかわいいよ」

と頭をヨシヨシと撫でた

順番が来て、グラグラ動いているロープウェイにソッと乗ると

「大丈夫だから」

と、手を引いてくれた

どんどん上に上がって行くと函館の町が遠くなっていく

窓に両手をつけ、口を開けたまま函館の町を見ていた

そして私の背中にピッタリとくっついてる健太がいて、背中がとても温かかった

あっという間に頂上に着いてしまい、ロープウェイから降りた私は子供のようにはしゃぎ、今度は私が健太の手を引いて歩いた
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