やさしい手のひら・中編【完結】
先生が来て

「力を抜いてね」

訳がわからないまま内診が終わり

「すぐ呼ばれますので出て待ってて下さい」

「はい」

私は緊張のあまり手に汗をかいていた。妊娠するとあんな検査をすることを初めて知った

「福田さんどうぞ」

「妊娠2ヶ月ね。順調に育っているわよ。まだ結婚していないようだけど、このことは彼は知っているのかな?」

私はすぐ答えられず

「…まだ…知りません」

うつむきながら答えた

「そう。産みたいのかな?」

「どうしたらいいのかわからなくて…」

私は今の気持ちを正直に言った

「そうね、びっくりして考えられないわよね。でも赤ちゃんはどんどん大きくなっていくの。どうな理由があれ、赤ちゃんには罪がないのよ」

「私…」

「産みたいか産まないかはあなたの気持ち次第よ」

私の目から涙が零れた

「無責任な気持ちがあるなら出産はやめた方がいい。産まれてくる赤ちゃんがかわいそうよ。一生懸命生きようって赤ちゃんはあなたから栄養をもらって生きてるの。あなたのお腹の中であなたの声を聞いて生きてるの」

先生の話を聞いて私は赤ちゃんを愛しいと思った。私の判断でこの命を消すことはできない

「一週間後また来て下さい。その時にどうするか考えましょう」

「はい」

「これあげるわね。あなたの赤ちゃんよ」

「えっ…」

写真だった。まだ赤ちゃんの形ではないけれど真ん中に小さく映っているのが私の赤ちゃん

「まだ人間の姿じゃないけど、真ん中の白いのが赤ちゃんよ」

涙が出てくる

大きくなっていく私の赤ちゃんを見てみたい…私は心からそう思った
< 181 / 388 >

この作品をシェア

pagetop