やさしい手のひら・中編【完結】
明日はクリスマスイヴ。そして病院へ行く日

産むことを決意してから健太に言うことはなかった

電話でしゃべっているけど、香水の匂いがした日から私と健太は会えないでいた

起きてからすぐにテレビをつけると、芸能ニュースが流れていて、私は熱いお茶を飲みながら見ていた

「えっ?何これ・・」

みるみるうちに私の目が涙でいっぱいになり、次から次と涙が流れていった

これって健太が朝方ここに来て、香水の匂いがした日

テレビのレポーターが説明している

「先週、Blacksのボーカル健太が自分のマンションから今、大人気の女優、佐原樹里(サハラ ジュリ)と腕を組み、マンションから出て来た所を週刊誌に撮られたと言うことです」

レポーターの話が耳から抜けていて、レポーターの声がだんだん遠ざかって行く

何がなんだか理解できず涙だけが流れ落ちる

私はテレビを見たまま瞬きもせず、頭が真っ白になっていた

♪♪♪~

携帯が鳴り響いていた

でも私には聞こえてこなかった

聞こえていたのに耳に入らなかったんだ

「どうして…」

健太が私を裏切った…

この言葉が頭の中で彷徨っている

裏切り、裏切った、裏切られた…

「イヤッーー」

頭を何度も横に振り、嘘だ、嘘だと叫んだ

私は耳を押さえ

「聞きたくない、聞きたくない」

ただ叫ぶしかなかった

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