やさしい手のひら・中編【完結】
病室には何も知らない私が眠っていた

その姿を見て由里が鼻をすする

「亜美・・・」

由里の後ろで立ち止まったまま動かないでいる凌がいた

ゆっくりと凌はベットに近寄り

「亜美・・辛かったよな」

そう言ってソッと私の頬を触った

寝ている私の目尻から一粒の涙が零れ落ちた

「亜美?」

凌が零れ落ちる涙を受け止める

「眠ってんのに泣いてる」

「なんでこんなことになるのぉー」

由里はその姿を見て目を逸らして涙を流していた

凌が両手で私の右手を握り

「俺が亜美を支えるから。亜美の辛さは俺が受け止めるから」

そう言って私の手を握っていた

病室は心電図の機械の音だけが鳴り響いている。私はまだ目を覚まさずにいた

暗い暗い闇の中を一人で彷徨っていたんだ。光のない世界でたった一人で・・・
< 192 / 388 >

この作品をシェア

pagetop