やさしい手のひら・中編【完結】
「亜美…」

下を向いたまま凌は肩を震わせていた

由里も亜美から顔を背けてしまった。見てるのが辛かったんだ

私は現実を現実だと認めたくなかった

そしてすべての人が敵だと思い、すべての人が信用できなくなっていた

私は殻に閉じこもってしまったんだ


次の日、両親が来て私の顔を見るなり泣き出した

でも私にはそんなことどうでもよくって、由里や凌がお見舞いに来てもしゃべらず、窓の外を眺めているだけだった

ご飯も食べずにいたため、脱水症状が出て、毎日点滴をしていた

凌が毎日朝から晩まで病室に来ていた。私に話し掛けることもなく、ただ隣で雑誌を読んだり携帯を見ているだけで、帰る時「また明日来るから」それだけ言うだけだった

でも今の私には凌の気持ちなど考えることもなく、私の頭の中は空っぽだった
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