やさしい手のひら・中編【完結】
「亜美がどれだけあんたを思ってたか知ってんのかよっ」

凌はまた健太を殴った。でも健太は殴られるだけで抵抗せず、脱力していた

「なんとか言えよ」

「・・・」

「俺はなんのために亜美を諦めたかわかるか。亜美があんたを求めて、あんたも亜美を求めたからだ。お互い必要としていたから2人には幸せになってほしいって思ったんだよ。でも、今になって後悔したよ。あの時、亜美を離してしまったことをな」

倒れた健太の上に圧し掛かり、また健太の襟を掴んだ

「もうあんたには渡さない」

凌の目が健太を睨む。健太はそれをただ見ていることしかできずにいた

「亜美だけは渡せない。俺には亜美が必要なんだ・・・」

口から血を流しながら健太が呟いた

「こんな目に合わせてもまだそんなこと言うのかよ」

「亜美に償いたい。そして俺の子供にも…」

健太がそう言った瞬間、凌は健太の襟を離した

そして立ち上がり、私を見た

「亜美…」

私は無感情なのに涙を流していた

健太は起き上がり私に駆け寄った

「亜美、笑ってくれよ…」

そう言って優しく頬を撫でた

大好きな手なのに、私は言葉を出すことも笑うことも、何ひとつ健太にできなかった

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