やさしい手のひら・中編【完結】
健太に会うのが久しぶりだったけど、仕事を抜け出して来ていたので、もう行く時間になり

「仕事行くな」

私も健太も名残惜しながらいた

「亜美」

「うん?」

「会えなくて、ごめんな」

「大丈夫だよ」

「正月休みはいっぱいあるから」

「うん」

玄関で黙って立っている私に健太は少し屈みながら、短いキスをし

「じゃ、行って来る」

「いってらっしゃい」

バタン

健太は仕事に行ってしまった

お正月に入るまで当分会えないけど、今は不安もなく穏やかな気持ちだった

これもみんな由里と凌が見守ってくれていたから…

凌は病院からずっと傍にいてくれた

そして輸血で私を助けてくれた

私の記憶を取り戻してくれた

凌がいたから私は生きている

凌…ありがとう。ありがとうじゃ足りないぐらいだね
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