やさしい手のひら・中編【完結】
部屋は私がいなくなった時のままだった

久しぶりに3月まで使っていたベットに横になった

ここを出る時は凌といたのに今は健太といる

この一年いろんなことがあった

そんなことを考えているうちに私は、我が家に帰ってきた安心からか寝てしまっていた

「ねーちゃん!」

「う…ん?」

「テレビに健太くん出てる!」

「え!」

私は勢いよく起き、部屋のテレビを付けた

「かっこいいよな」

隣にいる駿がテレビを覗き込んでいた

「駿、大きくなったね」

「バカにすんなよな。高校生だぜ」

「そうだよねー」

すっかり駿は男らしくなり、私の背を越えてしまっていた

「健太くんに会いたいな」

「来るよ」

「はあ?いついつ?」

「秘密」

「教えろよ」

「あ、健太だ」

テレビでの健太はあまり笑わなくて、私といる時の健太と違うんだ

「いつ来るの?」

「多分2日かな」

「楽しみだな」

Blacksは新曲を披露し、健太は真剣な顔で歌っていた

やっぱり健太は歌っている姿が一番輝いて見える。堂々と歌う健太は格好いい

デビューして2年。Blacksは前よりもっといい曲を作り、今では1、2位を争うぐらいの人気だ

そんなBlacksを誇りに思う

今までの努力が実ってここまできた

これからもずっと健太には歌っていてほしい

私はテレビを見ながらそう思っていた

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