やさしい手のひら・中編【完結】
でもその後すぐに

「とっくの前に別れてるよ」

凌はそう言い、一瞬顔を曇らせ残っていたビールを一気に飲み干した

それから凌はペースが早く、見る見るうちにジョッキーを開けていった

それを見て由里が

「本郷飲み過ぎだって」

と、ちょっときつい口調で言うと

「あ?」

機嫌が悪いのか由里の顔を見ないで答えた

「凌、もうやめた方がいいよ」

私も気になり凌に言った

「やめてほしい?」

何か企んでいるような顔で私の顔を覗きこんだ

「亜美が…」

そこまで言うとしゃべることを止めてしまった

「その次は何?」

私は凌の顔を見た

「やっぱいい」

そう言って立ち上がろうとした時

「凌危ない」

凌は酔っているせいでふらつき、私の方に倒れ込み抱き合う格好になってしまった

「凌、わざとかよ」

私の列の奥から声が聞こえ、顔を出し見てみると坂下がいてさっきの声の持ち主は坂下だった

「ちょっと凌大丈夫?」

私の耳の横に凌の顔があり、私は凌の耳元で言った

すると凌は

「ごめん」

そう言って私から離れ、廊下に出て行った

さっきまで凌の顔があった耳元が熱くて、心臓が早い脈を打っていた

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