やさしい手のひら・中編【完結】
私達は今日の夕方の便で東京へ帰ることにしていた

「次はいつ帰って来るの?」

お母さんは私が持って帰る荷物を荷造りしながら言った

「うーん、夏休みかな?でもまだわからない」

「そう。準備はいい?空港まで送るわね」

「すいません」

健太が私の荷物をトランクに入れ

「健太くん忘れ物ないかしら?」   

「はい、大丈夫です」

「じゃ、亜美行くわよ」

「お母さん安全運転でね」

また当分帰って来ない実家を出て空港へ向かった

外の景色を見て去年の春を思い出していた

お父さんに空港まで送ってもらう途中、健太を思い、そしてここを出る寂しさで泣いていたよなぁ…

でも今、私の隣にはその健太がいる

人生って本当に何があるかわからない

出会いもあれば別れもある

私はその2つを経験し、笑ったり、泣いたり、いろいろな感情を剥き出しにしてきた

人もいっぱい傷つけた

もうあんな思いはさせたくない

私はゆっくり健太を見ると、私の大好きな笑顔で私を見て

「帰りたくなくなった?」

そう言って笑っていた

この笑顔をなくしたくない…

私達はお母さんに見送られ、あの華やかな東京へ旅立った
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