やさしい手のひら・中編【完結】
「これで仕事頑張れる」

私の顔から離れて、ニカッと笑った。その笑顔が格好良くてキュンとしてしまった

テレビでは絶対見られない健太の笑顔だった

それからDVDを見てゆっくりと最後の休みを2人で過ごした

次の日、昼前に健太は仕事へ行ってしまい、今日から健太がいない日常に戻る

ツアーが入っている訳ではないのでまったく会えないということではない。年末のような忙しさはないので時間が空いている時は会える

だから私は心にゆとりがあり、不安も何もなかった

♪♪♪~

リビングのテーブルの上にある携帯が鳴り画面を見ると、

『着信 新くん』

新くんからだった

「もしもし」

「俺ー、今年もよろしく」

新くんとしゃべるのは妊娠がわかる前に看病してもらった時以来だった

「あ、よろしくね」

「何やってんの?」

「うん?何って…別に何もしてないけど…」

「今日暇?」

暇と言えば暇だけど…

「どうして?」

「みんなで新年会するって」

「みんなって?」

「出版社の人達とだよ」

「じゃあ、田村さん来る?」

「そりゃ、来るだろ」

「じゃ、行く!」

「なんかその言い方ムカつくんだけど」

「なんか私言った?」

「もう、いいよ。6時に迎えに行くから降りて来て」

「私、自分で行くよ」

「いいから、黙って言うこと聞け」

「はい、お願いします」

「おぉ、それでいんだ」

会話が可笑しくって、新くんの言葉に甘えて迎えに来てもらうことにした
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