やさしい手のひら・中編【完結】
「着いたぞ」

窓の外には東京を見渡せる一面が広がっていた

「おいで」

新くんは先に車から降り「早く」と、私を急かした

「きれい」

東京湾から見る東京は夜なのに明るく、夜景は街がキラキラしていた

「いいとこだろ?」

「うん。東京にもこんなきれいな景色が見える所あるんだね」

ライターでタバコに火を付けながら

「落ち込んだ時とかここに来たら落ち着くんだ」

「うん、なんかそんな感じの場所だね」

新くんはタバコを吸いながらずっと街を眺めていた

「俺の…」

「うん?何?」

「俺のいろんな噂聞いてるだろ?」

女泣かせっていう話だろうか…

「う…ん」

「前までは確かにそうだった」

その言葉に反応してしまい、私は新くんの顔を見た。でも新くんは私の顔を見ず

「でも今は違う。初めて恋っていうやつをこの年になって知ったのかもしれない」

そう言って笑った

「自分の物にしたいって思ったんだ」

ゆっくり私の顔を見て、

「そいつといると楽しくて、傍にいたくて守ってやりたくなる。でも…」

うん?私は首を少し傾げた。でも?なんだろう?
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