やさしい手のひら・中編【完結】
「寒いだろ」

新くんは私にそう言って、手を差し出した

この手を私はどうしたらいいのだろう

そんなことを悩んでいる隙に

グイッ

手を引っ張られ、私の手は新くんの手の中にある

「亜美が好きだ」

新くんは遠くの海を見ながら言った

え?今なんて言ったの?私は繋いでいる手から目線を新くんに向けた

「亜美が好きなんだ。初めて会った時から…」

嘘…だって私のことからかったりしていたのに…

「健太がいるのはわかってる。でもこの気持ちを隠しておけない」

私の手を引いて、私は新くんに抱き締められた

「こんなに人を好きになったのは亜美が初めてなんだ」

ギユッと強く新くんの腕が私を締め付ける

「だからと言って、健太との仲を壊すつもりはない。ただ俺の気持ちを知っていてほしい」

あまりにも突然で信じられなくて、私は横に見える大都会を見つめていた

新くんのことをそういう目で見たことがなかった

私の気持ちを知っていながらも新くんは私に「好きだ」と言ってくれた 
< 253 / 388 >

この作品をシェア

pagetop