やさしい手のひら・中編【完結】
ハアハアハア

気付くと周りは私の見たことがない街並みだった

どのくらい走ったのかさえ、気付かなかった

走るのをやめ、私はゆっくりと歩いた。やっぱり思い出すのはさっきの光景で、目に焼き着いて、頭から離れない。何度も頭を横に振ったけど消えてくれない

そしてただ涙が流れる

健太、追い掛けて来なかった。携帯も鳴らない

それが虚しくて、悲しくて…

信じてたよ

写真を撮られた時だって、あとから話を聞いたことだったけど信じたよ。でもまた佐原樹里がいた

佐原樹里の噂は聞いてるけど、だからって私の目の前で…

私があの時入らなかったらキスしてた?

それを見なかった私は運が良かった?

自分で涙を拭きながら、道に沿って歩き続けた

ふと、行きたくなった場所を思い出して、私は道路の縁に立ち手を上げた

すぐにタクシーが止まり私は乗り込み

「東京湾までお願いします」

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