やさしい手のひら・中編【完結】
「何やってんだよ」

玄関から健太の声が聞こえ、走って私の所に来て凌を掴み上げ凌の頬を殴った

「亜美が震えてんのがわかんねぇのか」

健太が私を床から抱き寄せ、健太の胸に引き寄せた

「なんで俺と亜美は幸せになれねぇんだよ」

飛ばされた凌が顔を上げ、健太を睨みつけた

「悪いと思っている」

健太が凌を見ながら謝った

「私が悪いの。私が全部・・・悪いの」

「本郷、俺も亜美もお互い必要としている。お互い求め合っている」

「俺だって、亜美が必要だ。川崎さんがいなくなってからずっと傍にいたのは俺だ。自分の夢だけで亜美を置いて行ったじゃねぇか」

「お前の言ってることは正しい。俺は亜美を置いて行った。でも、こっちに来てから亜美を忘れたことはなかった。偶然クラブで会った時、これは運命なんじゃねぇかって思ったんだ」

凌は何も言わず黙って聞いている

「亜美は俺が幸せにする」

健太は真っ直ぐ凌を見て、真剣な顔で言った

「亜美・・・・俺じゃ駄目なのかよ」

「凌・・・ご・・めん・・ね」

凌は立ち上がり

「もう離れるな」

そう言って、凌は玄関の方に向って行った

「凌・・」

「戻る気ないなら追いかけるな」

健太にそう言われて私はこれ以上何も言えないのだから、追いかけることを諦めた

「亜美、大丈夫か?」

「うん」

私達はお互いに抱き合った。もう離れてはいけない、凌を犠牲にして健太に戻ったのだから、離れてはいけないんだ・・・

床に落ちていた私の服を取り、私に着せてくれた。そして私をソファに座らせた

「あいつの分、俺達が幸せにならないとな」

そう言って私の頭をそっと撫でた

私は頷き、健太の胸でたくさん泣いていた
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