やさしい手のひら・中編【完結】
「ここでいいです」

私は昨日、新くんと来た東京湾に来た

新くんが落ち込んだ時来ると言っていた場所

私もここから見える夜景を見て、癒されたかった。少しでもいいから記憶を消したいと思ったんだ

波が岸壁にぶつかる音が聞こえる。寒いけどやっぱりここから見る東京はきれいだった

「はぁ…」

私が入った時、健太は驚いた顔をしていた。でも健太が私を呼んだから行ったことで、こうなることを考えなかったのだろうか

「見たくなかっ…たよ」

健太はなんて言おうとしたのかな?

逃げないでちゃんと聞くべきだった?

涙が止まらなくって何度も自分の手の甲で涙を拭いていた

「亜美?」

薄暗い奥から人影がこっちに向かって歩いて来るのがわかる。でもライトの前にいるから眩しくて見えない。私の名前をまた呼んだ

「亜美か?」

「あ…新くん」

新くんを見た途端、涙が余計に溢れ出す

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