やさしい手のひら・中編【完結】
「なんでこんな所にいるんだよ!」

周りをキョロキョロしていた

「一人なのか?」

うん、と私は頷いた

「なんで泣いてる?」

「…」

「なんで泣いてんだよ」

私をフワッと抱き締めた

「健太と何があったんだ?」

すぐ健太とのことだと、ばれてしまい

「ウワーン」

誰かにすがりたかった私は、新くんの腕の中で声を出して泣いた

さっきまで寒かったのに、人の温もりというのはこんなにも暖かいものなんだね

「落ち着いた?」

私を新くんがゆっくり離し、首を傾け

「どうやって来た?」

「タクシーで…」

「そっか」

「新くんが落ち込んだ時ここに…来る…って言ってたから」

「俺も落ち込んでたから、また来たんだ」

私は顔を上げ、新くんを見た

「亜美に昨日言ったこと後悔したんだ」

「えっ?」

「ぎこちなくなるんじゃないかって…」

新くんは切なそうに私に言った

私もそれを恐れていたのかもしれない
< 261 / 388 >

この作品をシェア

pagetop