やさしい手のひら・中編【完結】
新くんのことは、このまま胸に閉まっておこうと思った。投げ遣りな行動だったことを今になって後悔してしまった

言ってしまえば楽になるけど健太を傷つけてしまう

だから健太には言わない

私はそう決めた

健太がお風呂から上がり、冷蔵庫からビールを出し、ゴクゴクと飲んでいる

「おいしい?」

「うまい」

これでいいんだ

私は自分で自分を納得させた

「亜美」

「うん?」

「一緒に住まないか?」

「えっ?」

突然のことで驚いてしまった

「佐原から逃げる形になるけど、去年から考えてたんだ」

健太はテーブルの上にビールを置き、真剣な顔で私に言った

「やっぱり俺は亜美とずっといたい。疲れて帰って来て亜美が家にいると嬉しいし・・・」

同棲なんてぜんぜん考えてなくって、こんな私と一緒にいたいと言ってくれる健太の言葉にとても嬉しかった

「毎日一緒なんだよ・・・それでいいの?健太の時間がなくなるんだよ?」

「俺の時間はすべて亜美の物だから」

健太は照れながらそう言ってくれた

「嫌なら嫌だってはっきり言って。俺のことは気にしなくていいから」

「嫌じゃないよ。嬉しいよ」

私は嬉しさのあまり泣きそうになった

「一緒に住む?」

「うん」

ギュッと健太が私を抱き締める

「すんげー嬉しい」

新くんとキスをしてバカなことをしてしまった。私は後悔だけが残ってしまった


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