やさしい手のひら・中編【完結】
やっと離れたかと思うとすぐ健太に抱き付かれ

「苦しかったよな、ごめん」

私は首だけでううんと否定した

「俺も久しぶりでドキドキする」

聞こえるよ。健太の心臓の音

「こうやって毎日一緒なんだよな」

ゆっくり私から離れ、健太は言った

「そうだね。泊まり以外はずっと一緒だよね」

「いない日もあるけどちゃんとここに帰って来る」

「うん」

「上がろう」

あまりにも広いお風呂で落ち着かず、すぐに上がってしまった

健太はお風呂上りはいつもビールを飲む

「亜美も飲む?」

「飲んでいいの?」

「いいよ」

「やったー!」

「引越し祝いに乾杯しよう」

2人でビール缶を付け

「乾杯!」

久しぶりにビールを味わった

「おいしいー」

「酔うなよ」

「大丈夫」

ずっと飲んでいなかったので体がポカポカして来て、顔が熱くなっていた

「おかわり」

「はあ?まだ飲むのか?」

「うん!飲みたい」

健太が冷蔵庫へと取りに行き、

「ほら」

私のほっぺたにビールをふっつけた

「冷たーい」

「目覚めた?」

「酔ってないもん」

「そんな目して酔ってないってか?」

そう言ってゲラゲラ健太は笑っている

「笑うなー」

「目がトロンとしてるぞ」

「フンッ」

私は健太の言ってることを気にせずゴクゴクとビールを飲み干した
< 288 / 388 >

この作品をシェア

pagetop