やさしい手のひら・中編【完結】
「わかりました。やらせて下さい」

「本当かい?」

小西さんの顔が見る見るうちに明るくなっていく

「断られたらどうしようかと思ったよ」

小西さんは安心したようで笑いながら言った

「いつの撮影ですか?」

「まだ詳しいことは聞いていないんだが、夏前かな」

「わかりました。よろしくお願いします」

私は頭を下げ、控え室に戻って行った

出だしから新くんと仕事ばかりだったので、いつも一緒の仕事が多かった

新くんと一緒に仕事をしているお陰で私も仕事がある

だから今回の仕事を断ってしまうと新くんの評価を下げてしまうことになる

私一人の我儘で仕事を蹴ることは出来なかった

やるからには一生懸命やろう

私はそう決め、帰る支度をして控え室を後にした

廊下の奥に立っている人が新くんだと言うことに気付いたのは出口の玄関に差し掛かった時だった

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