やさしい手のひら・中編【完結】
「待ってたんだ。送ってく」

ドキッ

「えっ?大丈夫、一人で帰れるから」

私はそう言ったのに聞いてくれず、私の手首を掴んだまま玄関を出て歩いて行く

「新くん、待って!」

「話なら車に乗ってから聞くから」

痛いほど私の手首を掴み、新くんの手を外すことが出来ない

車の前でやっと手を解かれ

「乗って」

「・・・」

「そんなに嫌かよ!」

大きな声で新くんが言ったので体がビクッとなってしまった

私は新くんの方をゆっくり見ると悲しそうな顔をしていた

「私・・・」

「気にしてるんだろ」

私、新くんに嫌な思いさせている

「キスしたこと・・・」

「・・・」

「俺はあれぐらいのキスはどうってことないから。挨拶みたいなもんだろ」

そう言って、フッと鼻で笑った

でもきっとこれは新くんの本心ではなく、私のこと思って言ってくれたことだ・・・私はそう思った

「子供じゃないんだから、あれぐらい気にするな」

そう言った新くんはすぐに車に乗り

「ほら行くぞ」

私はどうしたらいいのかその場で悩んでいると

「ほら」

と言って運転席から助手席を開けてくれた

変に意識するの良くないと思い私は車に乗った

乗って良かったのか悪かったのか今の私には考える余裕もなく、ただ新くんを傷つけてしまったことを気にしていた
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