やさしい手のひら・中編【完結】
「健太と仲直りしたの?」

運転しながら新くんは私に言った

「うん・・・」

「そっか。良かったじゃん」

新くんの気持ちを知っていながら健太の話をするのがとても苦痛だった

「小西さんから話聞いた?」

「プロモーションビデオのことだよね?」

「そう。どうすることにした?」

「やってみようと思う」

「断ると思ってたよ」

私は新くんの顔を見た

「俺との仕事だからな」

タバコに火を付け少し窓を開けながら

「断るなら今だぞ」

新くんは笑いもせず真っ直ぐ前を向いたままそう言った

「断らないよ。やってみたいし・・・」

「ふーん。そっか」

それ以上何も言わなくって、車内がシーンとなる

「亜美」

「あっ、はい」

思わず緊張してしまい、敬語で返事をしてしまった

「ククッ」

私の敬語が可笑しかったのか笑っている

「なんで、はいって言うのよ」

「だって、突然呼ぶから」

「仕事・・・頑張ろうな」

クシャっと優しい笑顔を向け、私の頭を撫でた

新くんの優しい笑顔・・・

胸が痛くって張り裂けそうだった

こんな私に優しくしてくれる・・・

私は仕事を休んで、今日だって憂鬱のまま仕事に来て・・・

それなのに普通に接してくれる新くんの優しさが私は嬉しかった

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