やさしい手のひら・中編【完結】
エレベーターに乗り、エレベーターは一階へと降りて行く

私は携帯を握り締めた

誰も乗る人がいないので、一度も止まることなく下に降りてゆく

エレベーターのドアが開き入口を見てみると腕を組んで立っている佐原樹里がこっちを見ていた

何を言われるの?何が目的?

心臓が痛い

「私が誰だかわかるわよね?」

「…」

「あなたが健太のね…」

そう言って足元から頭の先まで睨むように私を見た

「やっと探しだしたのよ。こんな所にいたのね」

刺がある言い方で私はやっぱりこの人が嫌いだ

「ここじゃなんだから、車に乗って」

そう言って佐原樹里は玄関前に停まっている車の方へ歩いて行った

行きたくないけど、行かなければならない気がした

「乗って」

私は後ろのドアを開け車に乗った。きつい匂いがする車で私は下を向いたまま何を言われるのか恐れていた

車はどこかの公園の横に止まり、エンジンの音だけがし、車内はシーンとしていた

「話ってなんでしょうか?」

私は佐原樹里の後ろ姿を見ながら聞いた

「邪魔なのよ!」

「えっ?」

「私は健太が欲しいの。だからあんたが邪魔なの」

「邪魔って・・・私は健太と付き合ってるの!」

私は負けないで佐原樹里に言った

「たかが雑誌のモデルぐらいでいい気になって。あんた、昔健太を捨てて違う男に走ったんでしょ」

「・・・」

フンッと鼻で笑い

「そんなひどいことをしていい身分ね」

「・・・」

「私、新とあんたのことも調べてみたの。いい感じみたいね」

「どうしてそれを・・・」

「なんでも知ってるわよ。証拠もあるし」

そう言ってバックの中から私と新くんの写真を出した

「それは」

東京湾で新くんと抱き合っている写真・・・

「健太に隠れてコソコソ会ってるんでしょ。いい身分ね」

「返して」

私は写真を取ろうとしたがスッと除けられた
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