やさしい手のひら・中編【完結】
「健太だけじゃなく、マスコミにも流そうかしら」

楽しそうに佐原樹里は微笑みを浮かべ、不気味に笑っている

ペラペラと写真をまた見せられた時、私が新くんのマンションから出てくる写真や車に乗っている写真、いつ撮られていたのかたくさんあった

「隠し撮りなんてひどい!」

「ひどいのはあんたよ」

ズキッ

心臓がギュッと掴まれたかのように痛い

「あんたに騙されて健太がかわいそう」

私は何も言えなくなってしまった

「どう?健太を私にくれる?」

「健太は物じゃない・・・」

「物のように扱ってるのはあんたも一緒よ」

佐原樹里の言葉が次々と私に突き刺さる

「今回Blacksのプロモ撮ったみたいね。私の力で潰せるけど」

私はハッとして佐原樹里の顔を見た

クスッと笑い

「また連絡するわね」

そう言った

私は車から降りてその場に立ち止まったまま動けないでいた

何がなんなのか頭の中が混乱していて、理解するのに時間が掛った

健太と別れろってこと・・・

それを言いに佐原樹里は私に会いに来た

新くんとの写真を撮られているとは思わなかった。その写真が佐原樹里の手の中にある

奪ってもネガがある限り、何度奪っても同じことだろう

健太に相談する?

でもなんて相談するの?

新くんとの写真のこと言える?

健太には・・・言えない

言えるはずがない

どこにいるのかわからない私は、ただ携帯を握り締めたまま夜の街を彷徨っていた
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