やさしい手のひら・中編【完結】
きっと理由があるはず

健太が私を裏切るはずない

佐原樹里がまた何か企んでいる

そう思うしかなかった

私の間違った判断で赤ちゃんがいなくなったから…

だから、だから今は落ち着かないと…

そう思っているのに私の体は震えている

拳を強く握って冷静さを保とうとした

でも小刻みに震える体は止まらなかった

不安で胸が張り裂けそう

早く帰って来て…健太


結局、朝になっても健太は戻って来なかった

一睡もせず起きていた

健太の帰りを待っていたんだ

窓から朝日が入り、私はベランダから外に出た

下を見ると目眩がするほどここは高い

太陽はもう東京を照らし始めた

ここから見る景色が大好きなのに、今の私には悲しい景色にしか見えなかった

ガチャッ

ドアノブを回す音…

私は走って玄関に行った

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