やさしい手のひら・中編【完結】
私より先に新くんが車から降り、おいでと私を呼んだ

私は車から降りて潮の匂いをゆっくり鼻へ吸い込んだ

潮の香りが鼻に入り、一呼吸して新くんの隣に行った

いつ見てもここは景色がきれい

私がここに来る時はいつも悲しい時ばかり

そんな私を慰めるかのようにここは私を安らかにしてくれる

「落ち着いた?」

うん、と私は頷いて

「新くん・・・私ね。わかってるんだよ。健太がもう戻って来ないって・・・。でもそれを認めるのが怖かった。自分で認めたくなかったんだよね。健太のあの態度が健太の出した答えなんだと思う・・・」

私の目から一粒の涙が零れたのを新くんが親指で拭ってくれた

「泣きたい時は泣け。俺の胸貸すから」

そう言って笑ってくれた

「私、強くなる!」

「はあ?お前いきなり何言ってんの?」

「健太が・・・」

泣きそうだから唇を噛み締め、手をギュツと握って

「健太がいなくても一人で生きれる女になる!」

私の中で何かが動き出していた
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