やさしい手のひら・中編【完結】
マンションの前に着き

「大丈夫か?」

「えへへ、強くなるって決めたのにね」

「バカ、こんな時に笑うな」

笑っていないとどうにかなりそうなの・・・

「電話すれ。わかったか?」

「うん」

新くんは悲しそうな目で私を見つめ

「俺がいるから」

そう言って行ってしまった

私は上を見上げた。今、健太はここにいる

どんな顔で私を見るのだろう。どんな言葉で言うのだろう

一歩一歩玄関のドアに近付いた

心臓が痛い。握っている手に汗が滲む

ガチャッ

ドアノブを回した

ドアの向こうには健太がいる

本当は凄く会いたかったんだ

ゆっくりゆっくりリビングへ向かう。自分で体が震えているのがわかる

私が帰って来たことに気付いた健太は一瞬だけ私を見た

健太…

唇までもが震える。私は健太を見た時から目に涙を溜め今にも零れそうなのを堪えていた

健太、涙で顔がよく見えないよ…

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