やさしい手のひら・中編【完結】
いつも二人で座っていたソファに間を開けて私は座った

こんな近くにいるのに顔を見ることもできない。触ることもできない

虚しさが私をボロボロにする

「…ごめん」

健太は俯いたまま拳の上に手を乗せ、私に言った

それは何を意味して言っていることなの?

「…別れよう」

あ・・・やっぱり・・・

私は愕然とし、返す言葉も見つからず瞬きも忘れ、頭の中が真っ白になっていた

それなのに次から次と頬を伝い涙だけは流れていた

これが現実。健太の出した答え

健太の真剣な声を聞いてこの答えは緩むことはない

私はそう思った

でも現実を目の前にした私はどうしたらいいの?

この孤独をどこへぶつければいいの?

部屋の中は私の泣き声だけが響いていた

でもそんな私の涙を健太はもう拭ってくれない

抱き締めてもくれない

「・・・もう・・・だめ・・・なの?」

やっとの思いで声を出した

「別れ・・・たく・・・ない」

健太・・・

俺もだよって言ってよ

また二人でやり直そうって言ってよ

「私・・・健太が・・・健太がいなきゃ・・・」

お願い、私を見捨てないで・・・

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