やさしい手のひら・中編【完結】
「どっか行きたい所ある?」

「どこでもいい」

「俺のマンションでいい?」

「うん」

今はどこでもよかった。一人じゃないなら・・・

新くんのマンションに来て、紅茶を飲みながらテレビを見ていた

その時

「・・・」

Blacksの新しいシングルのCMが入った。私はテレビを見ることが出来ず目を伏せてしまった。でも健太の声だけは聞こえてくる・・・

健太を見ることも声を聞くことも今の私には残酷なことだった

そしてまた昨日のことを思い出す

別れよう、と言った健太の言葉がこだまする

バチッ

新くんは私に気を使ってくれたのかテレビのスイッチを消した

「帰るか?」

「一人に・・・なりたくない。私を・・・抱いて・・・」

私の言葉に新くんは今、どんな顔をしているのだろう・・・

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