やさしい手のひら・中編【完結】
気持ちを落ち着かせながら、私達は近くの喫茶店へと向った。健太が今、ここにいないこの場所で凌と会うことを申し訳ない気持ちでいっぱいだった

自動ドアが開き、私達の奥の方に凌と坂下が座っていた

入って来たのがわかったのか、坂下が由里を見る。でも由里はすぐに目を逸らし、坂下と目を合わせなかった

「行こう」

私は由里と優香を連れて、先頭に歩き凌達のテーブルまで来た

空いている場所が凌達の向かいで、そこに由里を奥に座らせ私は真ん中に座り、優香が通路側座った

「話しって何?」

私は坂下を見て、聞いた

「謝りたくて」

坂下の目線は氷の入ったグラスを見ていた

「由里は部屋で気絶していて、私と優香が見つけなかったら大変なことになっていたんだよ。すぐ病院に運んで、それから入院して・・・」

坂下は顔上げ目を大きく開け、とても驚いていた

「由里すまなかった」

坂下は由里に頭を下げた。私はすぐに由里を見ると、拳を握って振るえていた。多分、トラウマになっていて、怖いんだろうと思い

「由里、大丈夫だよ」

私は由里に微笑みながら言った。なんとか由里を安心させたかった

「あそこ引越したいと思ってるの」

私は単刀直入に坂下に言った。すると

「先週、引越した。もう俺の荷物は何もないから」

「由里をあそこには帰せなくて、私もなんとかしようと思っていたとこだったんだ」

「慎は俺と一緒に住んでるから」

凌がここに来て、初めて口を開いた

やっぱり坂下は凌の所にいた。でも私はそれがよかった。凌も一人だったから・・・

「由里、幸せになってくれ」

坂下は由里をやっと見て、愛おしそうに由里に言った

由里の目から涙がポロポロと流れ、由里の拳に涙が落ちて行く

「ごめんね・・慎」

「俺が悪いんだ」

お互いに謝り、ここから由里は出発出来るのかもしれない
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