やさしい手のひら・中編【完結】
昨日のスタジオへ行くと、昨日のメンバーが集まっていた

田村さんが私に気付き、

「亜美ちゃん、ごめんね。呼び出して」

「いいえ。今日短大さぼったんで」

「何かあった?」

「なにもないんですけど、眠たくて」

私は笑顔で答えた

「よっ」

後ろを振り向くと新くんがいて

「今日も俺と一緒だから」

そう言って、私の横を通り過ぎ、スタッフの人としゃべっていた

「亜美ちゃん、着替えましょ」

着替えるため昨日の部屋に入り、またメークの人に化粧をしてもらった

「今日はまた違う感じでメークしますね」

「は、はい」

私は目を閉じ、メークの人にすべて任せていた

「目開けていいですよ」

「わぁ」

今日はまた昨日と違ってお姫様のような髪でメイクもかわいいという感じだった

「今日はねぇ、ウエディングドレスなの」

えっ、ちょっと待って・・・

「かわいいのよ」

「待って下さい。私、着ないといけないんですか?」

「着たくない?」

「結婚・・・する時だけに着たい・・です」

「でも、今日着ないと撮影にならないから」

「・・わかりました」

なんか悲しかった。健太との結婚の時にそれはとっておきたい・・・そんな気持ちだった

私は黙って立ったままで、スタイリストさんが私に着せてくれた

「あ・・」

自分のウェディングドレスを見て、胸がいっぱいになった。真っ白のドレスで肩の部分が開いていて、ベールが長く、シンプルなんだけど、誰が見てもかわいいと言えるドレスだった。今すぐにでもお嫁に行けるという感じで・・・

こんな素敵なドレスを着れるなんて、私にはもったいない・・・そして健太との結婚の時に着たかった・・

そんなことを考えていたら、スタッフの人に呼ばれてしまい、私は慣れない格好でスタジオに向った

思っていたよりドレスは重くて、スカートの部分を上に上げながら歩いた。自分で踏んで転ばないようにゆっくりゆっくりと進んだ
< 89 / 388 >

この作品をシェア

pagetop