With a smile
「絶対にダメ、です・・・」

私の頭の中では建都さんが浮かんでいた。

あの日母親の不倫現場を見た建都さんの顔。

奥さんに建都さんのお母さんが、ユージくんに建都さんが重なる。

両親の不仲がどれだけ建都さんを傷つけたか、どんなに寂しい思いをさせたか。

「ダメです、ダメです・・・」

それだけをバカみたいにくり返していた。

目の前の奥さんじゃなくて、建都さんのお母さんに言っているのかもしれない。

他の言葉が出ない代わりに涙が滲んでくる。

「ちょと、なんであなたが泣くのよー」

奥さんが私の肩に手を置いた。

「すみません。でも、でもそうなるんだったら買わないで、別荘なんて絶対に買わないで」

「あなたがそんな事言っていいの?」

「だってお2人の間にはまだ愛があるじゃないですか。大事にして下さい。奥様がその愛を手放したらもう二度と取り戻せなくなる」

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