With a smile
「若いわね」

「歳は関係ありません。お願いです、ユージくんに辛い思いをさせないで下さい」

奥さんの肩がピクッと反応した。

「でもダメなのよ。私達に・・・あの人に愛はないわ」

今にも泣き出しそうな子供みたいな顔で、静かに微笑を作った。

きっと今まで沢山沢山泣いて、涙が枯れるほど泣きつくして、もう泣けなくなっているのだろうと思った。

何度も泣いて、何度も諦めた。

その時間の長さに胸が締め付けられる。

「そんな事ありません。ご主人にも大きな愛があるんです」

私はその確信を持っていた。

フッ、と鼻で笑った奥さんにはっきりと言う。

「さっきご主人言ってましたよ、ユージくんの為にプールには滑り台をつけたい、って」

うそっ、奥さんの口から漏れたその小さな言葉には、驚きよりも大きな期待がこもっていた。

そして自然に笑顔になりながら、一番伝えたい事、奥さんに一番必要な事を言った。


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