With a smile
あの人だ、あの人だ、あの人だっっ。

今が歓迎会の最中だという事も、瞬きさえ忘れて見つめた。

みんなから、遅せーよとか、もう料理無いぞーとか声を掛けられ、それにいちいち笑顔で返しながら、営業部部長の所まで行くと何か報告するように話した。

声は聞こえないが、酔っ払って眠そうだった部長の顔がみるみる元気になって、あの人の肩をバンッと叩き、立ち上がった。

「みんな聞いてくれ、例のプロジェクトウチが勝ち取った。これから忙しくなるけど、よろしく」

全体から歓声が沸き起こった。

何の事か全然分からないけれど、みんなが喜んでいた。

そして、みんなの祝福と尊敬の目があの人に向けられている。

「建都、建都」

あちこちのテーブルから引っ切り無しに呼ばれ、その度にあの人を中心に乾杯が行われた。

新入社員歓迎会は、すっかりあの人の祝賀会に変わった。

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