With a smile
午後に電話を受けた高島さんの口から、「ああ、建都くん」と聞こえ、「はい、はい、分かりました」と短い電話が切られた。

電話だから建都さんが何を話しているのか分からないけれど、営業だから外にいるんだ、やっとここにいない理由が分かった。

建都さんからの電話、私も受けたいな。

お客さんから直接電話が掛かってくる事の多いうちの部署では、外線に出る事をまだ許されていない。

まず、電話に出られるようになろう。

それには電話のマナー以外に商品知識や専門用語、仕事の流れやパソコンの中の膨大な情報の扱い方、沢山覚えることが必要だ。

でも頑張れる気がした。

早く仕事がちゃんと出来るようになって、建都さんと一緒に仕事をしたい。

終業時間の5時になっても建都さんは戻ってこなかった。

優しくて話しやすい高島さんだけど、「建都さんは?」とはとても聞けない。

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