With a smile
「行くよーー」

数歩先にいた7、8人のグループの一人がその人を呼んだ。

声の方へ軽く手を挙げ、

「じゃ」

と私に笑顔のまま言い、走ってそのグループへ加わっていった。

その人が加わるとすぐにグループ中に笑い声が起こり、その中で、その人が一番大きな声で笑った。

その背中が見えなくなっても、ぼーっと立ち尽くしていた。

あの人の笑顔が、真っ暗に見えた私の道に光を差したような感じがした。

私は世界で一番不幸なんかじゃない。

私にもあんな風に笑える日が来るような気がしたし、笑いたい、と思った。

ほんの数十秒ほどの事だったが、その人の笑顔と笑い声が、余韻と言うには強過ぎるほど大きく私の体の中に残った。


< 4 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop