With a smile
建都さんは海を見ながら、ぽつりぽつりと家族の話をした。

小学生の頃からご飯や身の回りの世話はお手伝いさんがしてた、授業参観や運動会に親が来た事は無い、毎週のようにテーブルの上に置かれたお小遣いに一度も手を付けなかった、そんな子供時代。

時々フッと他人事みたいに笑った。

「こんな暗い話しちゃってごめん」

「いいえ」

いつも明るくて元気な建都さんに、そんな生い立ちがあったなんて思いもしなかった。

なんでこんな風に笑えるんだろう?

無邪気で、見るだけで人を幸せにする笑顔の裏には、大きな孤独や寂しさを経験していた。

笑顔を見て好きになったけれど、笑顔じゃない建都さんを知って、もっと好きになっている。

「家の事人に話したの初めてだな。これ内緒ね、トップシークレットで」

人差し指を口元に当てて、少し照れくさそうに、やっぱりピュアな笑顔で言った。

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