With a smile
「中学程度の文ばかりだ。中学校は出てるだろ?」

そりゃあ出てるけど・・・、呆然としている私に一冊の辞書を渡すとすぐに自分の仕事に戻った。

机には2つ並んだ日本語の案内状と和英辞書。

短大の時もこんなんだったよな。

辞書なんて久しぶりに開く。

しかし古いな、これ。

カイさんがくれた辞書は随分使い込まれていていて、あちこちにアンダーラインや書き込みがされていた。

裏表紙を開いた下には「IGARASHI」とマジックで書いてある。

カイさんの使ってたやつなんだ。

カイさんもこれで英語を覚えたんだろうか?


半年ぶりの英文作成はかなり疲れた。

確かに文章は短いし、難しい言葉は使っていないから、何となくの文章には出来るが、とにかく自信がない。

これは学校の宿題ではなく仕事なのだから、そんなんでは提出できない。

何度も辞書を引き、何度も書き直してやっと出来上がった頃には夜8時を過ぎていた。



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