僕等の初恋
1
初めて好きになった
“今年の夏は
例年より暑くなるでしょう”
そんな天気予報が世間に流れ、
見事的中した8月の上旬の事。
僕、高橋上総(たかはしかずさ)は
高校2年生の夏休みを向かえていた。
電車に揺られながらの登校も、
2年続けていると
いい加減飽きてきた。
でも、暑い夏や寒い冬は、
電車通学で良かった
なんて思ったりしている。
補習授業を終え、
荷物をまとめると
僕の足はヤツの元に向かっていた。
「帰るぞー…、
ってどうした?」
「かーずっさくん♪
何焦ってるんだい?」
そう語尾に“♪”を付けて
笑顔を返したのは、
千村亮(ちむらりょう)。
椅子に座って、
“俺は動かねー”
というプラカードを掲げていた。
ように見えた…。
小学校からの親友で、
これまた小学校から毎日一緒の登下校。
オマケに“高橋”と“千村”で
出席番号はいつも前後ろ。
電車通学が飽きたのも、
亮に飽きたからかもしれない…
っていうのは嘘だけど。
というより、
亮の不気味な笑顔と
そのプラカードに驚いた。
「え…亮、
本当にどうかした、か?」