僕等の初恋
いつの間にか離れていた手に
ホッとしていると、
前の亮が止まって
僕の方を振り返った。
「着ーいーたー!」
教室から徒歩2分。
そこは目を閉ざしたくなる、
そんな場所…。
「…帰るわ」
その時、亮の語尾に
“♪”がついていた理由が
分かった気がした。
僕は教室に置きっぱなしの
バッグを取りに戻ろうと
向きを変えた歩き出した瞬間、
上半身だけがその場に残った。
両肩にはしっかりと置かれた
ヤツの手。
仕方なく、進めた足を戻した。
「待ていっ!
ここは俺の聖地だ、花園だ!
思う存分楽しんでけっー!」
目に星をちりばめて、
僕の手を再び
“逃がすまい”と
掴んで離さなかった。