Murder a sponsor.
「くそっ……くそっ!!!」

「……真人くん」

「なんでこんなことに……!!!」

「真人くん!」

「!」


 舞さんに力強く名前を呼ばれ、俺はハッと我に返る。

 そうだ、2人を置いていくなんてことはしたくないけど、今はここで足止めを食らっている場合じゃない。2人には悪いけど、俺達は少しでも前に進まなくちゃいけないんだ。

 ――少なくとも、こんなイかれたゲームを創った主催者の顔を拝むまでは、誰かに殺されたり、トラップに引っ掛かって死ぬなんていうことは、したくない。


「気持ちは分かるけど……いつまでもこうはしていられない」

「……そうだよな。分かってる。分かっ、ている……」

「……。真人くん、彼女が言っていたこと、分かった?」

「え?」


 美智子さんが、言っていたこと?えっと、確か……。


「だめ、引き出しを開けたら包丁が飛び出……し……とか、なんとか」

「彼女の言いたかったことって、アレかしら」


 舞さんに指を差された方向を見てみると、包丁が閉まってある引き出しが――開いていた。

 俺達が包丁を取った引き出しじゃない、まったく違う引き出し。

 だけど、なんであそこの引き出しが開いて――はっ、まさか。

 俺は嫌な予感がして、すでに動かなくなった2人の手元を見た。

 ……。ない。


「な、い」

「え?」

「ないんだ、包丁が」


 俺達に襲い掛かってきた時に向けていた包丁が、2人の手元にはなかった。
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